逃走

逃げるように東京に出てきたけれど

全く西も東も分からない

だからと言って息子の家にお世話になるのは絶対に嫌だ

とりあえず、東京の隅でアパートを探したい

そう、息子に連絡を取ったら、探しておくから

そう言って住所を書いたラインが送られてきた

息子もうちに来いとは一言も言わなかった

期待はしていなかったが寂しいものだ

その住所のアパートに行くのにわかりにくいだろうと

チェリーに案内させると言ってきたのだ

東京駅で4時間待ったころ、やっとやって来て

あたりはすっかり夜

東京駅からはその住所まで結構あることから

ホテルに泊まろうと言ってるのだ

 

「だって、お年寄りって早く寝なきゃなんでしょう?

あっちにつくの10時ころになっちゃうよ」

 

「ばかばかしい!

誰がそんなこと言ったんだい?

私はいつも寝るのは夜中の一時だよ」

 

その住所までぐらいならサッサと行けると思っていたのに

わざわざ、息子が孫に案内させると言うから遠慮してたのだ

おかげで、おなかの中はコーヒーでタプタプしている