逃走

「おばあちゃん、ホテルに泊まろうよ!

うち、ホテルに泊まりたい!

ママがね、うちらが小さいころ

よく、パパと喧嘩した時に帝国ホテルに

連れって行ってくれたんだよ」

 

この馬鹿な孫はペラペラと良くしゃべる

祖母の安江は孫の智恵理を呆れながら見る

長い間、田舎に暮らしていた安江は

息子の浩行とはできるだけ疎遠に暮らしてきた

嫁の家が資産家で苗字こそ息子の苗字だが

実際は入り婿同然なことはわかっていたし

田舎から出て行って、わざわざ、悶着を起こすこともない

孫たちともめったに顔を合わすこともなかった

 

だいたい、孫は目に入れても痛くない!なんて

絵空事だれが言い出したんだろう?