魔女
私のアパートのすぐ上に彼女は引っ越してきた
ちょうど、くうちゃんが来て一週間くらいの頃だ
くうちゃんは来てすぐから
おばあさんに新しいお母さんだと言い含められたらしく
私のことを『おかあさん』と呼んだ
驚いた私は、握っていた小さな手を放したが
泣きそうな顔になったくうちゃんの顔を見て
もう一度手を握り、おかあさんでもいいかな!と思った
だから、彼女が私とくうちゃんのことを
親子だと思ったのだろう
引っ越してきてすぐに、白いタオルを持って
「上に引っ越してきた、正野です。
あら、お嬢さんがいるのね、うちもなんですよ
お友達になってね」
彼女の後ろには、くうちゃんよりも少し大きい女の子が
恥ずかしそうに立っていた
彼女は美しい人だった
背の高い、こんなアパートにはめったにいないような
おしゃれなモデルのような女だった