九州の真ん中
深い山の奥の村
村自体はこの辺りの村の中では決して小さいほうではない
この村の村長の家は古い大きな立派な木が門のそばにあり
その近くには古い蔵もあった
昭和10年の頃でも、ずいぶん古い家だったのだが
その家の広さ、庭にある池、茅葺の大きな屋根
そこで生まれたのが祖母だった
僕がその家を見に行った時には
もう、新しい、東京にもありそうなこじんまりとした
建売住宅が数件立っていて
その大きな木ですら跡形もなかった
ちょうど、祖母は青春時代を
太平洋戦争の真っただ中で過ごしたのだ
祖母が二歳だった頃、
1937年、昭和12年におこった日中戦争を皮切りに
日本は第二次世界大戦に参戦していく