発達障害の母

それはたぶん、毎夜毎夜寝る前に昔話を聞かせてくれた父の

話の中だったのだろう

昔話はたいがい、勧善懲悪で終わるようになっている

自分が子供を持つまで気が付かなかったが

私を寝かせつけてくれたのは弟が生まれるまで父だった

それを当然のこととして私は受け止めていたのだが

世間一般で考えると、ずいぶん稀有なことだ

母はそんな心細やかなことのできる人間ではなかったことを思い出す

弟が小さいころ、泣き出すと放り投げるんじゃないかと思うほど

激しくあやすか、逃げ出すかだった

相手の心に寄り添うなんてことは母の中に全くなかった

母が置きっぱなしにした赤ん坊の弟を静かになだめるのは

いつも私だった

今でこそ、子育てには父親も参加するものだ

そう言われているが、当時はそんなこと考えられなかった

九州の田舎、男尊女卑、男は仕事さえしていればいい

そんな環境のなか、父はいつも私の相手をしてくれていた