発達障害の母
だから、この土地に帰ってくるのは嫌だったのだ
母のような人間が大手を振って生きていける場所
母が発達障害ならば、周りの人間はまるで正気ではない
でも、わかってはいる
だって、ここで生きていかなければならない人間にとっては
どんな悪口を言いながらも
お互い家の中で悪口を言うくらいにして
適当に受け流していかなければならないのだ
子供のころ、そう感じていたことを忘れていたのだ
「でも、まさか、だっ・・・て」
「まぁ、あそこがそうとは言わないよ
でも、姉弟ったってやればできるんだからね」
「でも・・・・」
「それがね、ここから二階の部屋が見えるだろう
右がお姉ちゃん、左が弟だよ
夜中に二つとも明かりはついていても
時たまどっちか一つの明かりが消えて
そのあと、また二つの明かりになるんだよ
なんて言っても姉弟だから明かりをつけっぱなしじゃ
できないんだろうよ」