発達障害の母
男の影はない
でも、どこでもチャンスがあればできるはずだし
もしかしたら、たった一回のレイプだったのかもしれない
こうして、私が悩んで手をこまねいているうちにも
赤ん坊はどんどん大きくなる
そうなると母親の目に留まるだろうから
余計なお世話なのかもしれないが
高校生の頃を思い出す
世の中のことなんて何も知らない真面目な女子高生
性はおろか男子のことすらよく知らなかった
もし、あの頃の私がそういう目にあっていたら
どんなに心細く、悲しいだろう
放っておけば死を選ぶかもしれない
母と食事をしていると母の話が始まる
それは、本当にどうでもいいことで
最初はいちいち丁寧に相手をして、一喜一憂していたが
最近はすっかりスルーする癖がついている
しかし、母も知能が足りないとはいえ
敏感なところはあるから、傷ついてはいるようだ
私がすぐに飛びつく話題を話そうと努力はしている
「あのね、あの、姉弟、ちょっと、おかしいのよ
昔、村であったことをちょっと、思い出したんだけど」