発達障害の母
母はなんだかうれしそうに葬式に行く準備をしている
「行かなくてもいいんじゃないの?」
「何言ってるの?皆行くわよ!
それが、この村の決まりだからね
あんたも早く着替えなさい」
私は行きたくはなかったし
行く義理も何もないのだけれど
ちょっと、村の人たちの様子を見てみたいと
一緒についていった
葬式にはほとんど村中の人が来ていた
そして、お坊さんが読経するときには
驚いたことにすすり泣きの声尾が上がっていた
え?そう思って母を見ると母も泣いている
千絵さんはそんなに惜しまれる人だったのだろうか?
葬式ではだれもが少し涙声で
「惜しい人を亡くしたね~」
「でも最後はあの人らしいね
ベランダから落ちるなんて、それも風呂と間違えるって
あの人はこの村に嫁に来た時から
粗忽物で、それでいて元気な人で
草切りなんて男顔負けだったからね」
そんな話が交わされていた
いや、それはボケていたからで彼女の性格のせいではないだろう