発達障害の母
子供のころは好き嫌いが多かった
でも、家を出て一人で暮らすようになった途端
別に嫌いな食べ物などないことに気が付いた
それが、母の料理の下手なせいだと気が付いたのは
ついこの間だ
何十年も子供のころは好き嫌いが多くて
大人になって何でも食べられる人間になったと思っていた
そんなことがたくさんある
人の気持ちがわからない人間だと思っていた
母の気持ちは子供の私には到底わからなかったから
でも、学校の友達とはうまくいく自分が
不思議だった
ああ、この子は今、こうしてほしいんだな
じゃ、こうしてあげよう
そう思ってやってあげると、たいがい喜ばれる
母の場合はよくわからない
それは母自体もよくわかってなかったからだろう
話がうまく進まない
「この、お漬物、おいしいよね」
誰かがそういうのを待って
「ああ、同じ同じ母ちゃんもそう思ってた」
誰かが言って、それに追随する
そんな会話しかしない人だった
立派な人の言うことをすぐにまねる
その立派な人の定義が
普通の完成で見れば、目立つ人とか
人の前に立って出しゃばってしゃべる人にしか見えないのに
母の中では立派な人という定義になっている