発達障害の母
それならばどんなにいいか
年をとってボケたり物忘れがひどくなったり
何かに固執して頑固になったり
それはよく知っている
父は五十代の時に病気で亡くなっていたし
夫の父親も早くに亡くなっている
「それがね、ついこのあいだまで
私、主人の母の介護をしていたのよ」
「あら、大変だったわね
そう言えば、うちの母も80にはなるんだけど
まぁ、父がいるし二人して旅行に行ったり
まだ、まだ、元気みたいだけど」
吉川さんの家の両親はよく知っている
穏やかで優秀な父親
優しいけれどしっかりした母親
その知性や教養は年齢を重ねるごとに
深くなっているのだろう
「主人の方の母親は
吉川さんのお宅のお母様に似てるかもね
優しくって知性的で
あ、そう言えばお宅のお母様って
N女子大のご出身じゃなかった?
うちの主人の方の母もそうなのよ」
「まぁ、そうなの?
お幾つかしら?同窓かもしれないわね」