逃亡

その濃い化粧の顔は東京に出て来てからは まったく身に覚えがないし 田舎の村でもこんな人はいなかったと思う ただ、私は今の生活が少し窮屈にはなっていた ここは高級マンションで、揃えられた家具も どれも、お金のかかった素敵なものだが どうも趣味が違…

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それでも、全く相手もわからないまま一週間ぐらいすると 幸喜が朝から慌てて飛び込んできた 「ばあちゃん、逃げないとやばいよ 夜中に変な化粧の濃いおばさんが カップヌードル一個買ってさぁ 俺にやたら聞くんだよ 俺がばあちゃんと一緒に住んでるとは知ら…

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「お義母さん、警察は先日の事件の時 ただの空き巣の仕業だろうと結果づけたみたいですが 私が調べてもらった私立探偵は あの空き巣事件の前に、あのあたりの周りを調べていた 女がいたそうです それで、回りの商店街とかに聞きまわっていたのは 『あの部屋…

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でも、その時間はほんのつかの間の物だった 美佐子さんが買い物から真っ蒼な顔で戻って来た 「お義母さん、ここも危ないかもしれません すぐに逃げたほうがいいです」 「え?何?どうしたの美佐子さん、 逃げるって?幸喜が関係してたやくざからなの?」 美…

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息子はチェリーの母親は 追っかけられて、仕方なしに結婚したようだったが この、美佐子さんのことは間違ってはいなかったようだ まあ、チェリーの嫁だって 間違ったと言いたくはないし、そんなことで 言いくるめてはいけないことなのだ このマンションで暮…

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私はそのスナックで常連の 小金持ちのお爺さんに買ってもらうことになり 後で聞けば、両親に200万、スナックのマスターに100万 払ったそうなんです あ、でもそれは誤解しないでくださいね 親指姫がモグラのおばさんに親切にされ 金持ちのモグラに嫁ぐように…

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「父と母は残ったお金でアパートを建てて その管理人としてやっていくことに決めて 私が高校のころには三人で そのアパートに住む大家におさまっていました 小さなアパートだし何かと物入りなことも続いて 私は高校に通うのが精一杯でした それでも高2になる…

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美佐子さんは、すぐに頷いた これは不思議なことなのだが 人間てやつは気が合うとか、一瞬にして ああ、この人ならば・・・ そう思うことがある 私は美佐子さんと会ったときにそう言うことを感じ それは美佐子さんもそうだったようだ 静かに自分用のコーヒー…

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村では、だいたい噂話を面白おかしくして よけいなことを言ってみたりするタイプ そう言う下世話な人間を下に見ていて ややこしいその仲間にはかかわらないタイプ 両方いて、一見、かかわらないで我が道を選ぶほうが 立派なように見えるが それはそれで間違…

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「美佐子さんはあんたが思っているよりも 数倍賢いし、心も綺麗だよ いいから、あんたはちゃんとシェリーの面倒を見るの」 チェリーはその日から、シェリーをおんぶしては 歌を歌って、うろうろするようになった 私にお茶を淹れながら 「さすが、お義母様で…

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「でも、あの女、子供も産んだことないくせに いつだって偉そうなんだけど!」 私はそんなチェリーを、本当に母親似で嫌な子だと 思いながら 「美佐子さんは子供を産んだことがあると思うよ あんたの子育ての手伝いが、赤ん坊を知ってる人のものだよ 今、チ…

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チェリーはムッとしたように 「だから、私はバカなんだ! そう言う理由だったのね」 「そうとも言えないけどね でも、シェリーのこと、ちゃんと考えなきゃ だいたい、もともと、仲のいい家庭でなかったにしても あんたのせいでこういうことになったんじゃな…

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チェリーはうんざりしたように 私の部屋に来ると 「ねえ、あの女、何母親面してるんだろうね バカみたい!」 私の横の部屋がチェリーと赤ん坊の部屋だから ドアが開いていれば、筒抜けだ もちろん、美佐子さんはそのことも計算済みなんだろう 「あんたのお兄…

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落ち着いてくると チェリーは赤ん坊が泣かなければ たいがい、スマホをいじっている すると、それに気が付いた美佐子さんが 「スマホ、やめましょうか? 何か赤ちゃんのことで困ったことがあったら わたしか、お義母さんに聞けばいいわ私たちがスマホで調べ…

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「私、会社で調査室にいたことあるんで ちょっと、心当たりある人に調べてもらいます」 美佐子さんはそうあっという間に決断すると 息子の弁当と拓の朝食を用意した 拓は帰ってくると嬉しそうに、それを見つけて 「お義母さん、ありがとうございます!いただ…

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「こっちのほうこそ、こんな風に転がり込んで 悪かったね~実はね・・・」 彼女にはすべてを話しておいたほうがいい そう感じて今までの経緯を話す 何と言っても私は年寄りで、 いつ、コロッと逝ってもおかしくない そうなると、チェリーの力になれるのは こ…

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「はい、私もそのほうがチェリーさんのためだと思いますが まだ、子育てにもなれない様子 夜中の授乳も大変そうですから しばらくはシェリーちゃんのために頑張ってもらって 少し落ち着いたら、食事の準備や掃除は 手伝ってもらおうと思っています」 完璧な…

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息子のマンションでの生活が始まって 私は美佐子さんは本気で息子を愛しているんだと つくづく、感心した 私には韓国ドラマのように誠実に敬意を払ってくれる 私は五時に目が覚める、みんなの迷惑にならないよう 台所に行って、こっそりお茶を淹れようとする…

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赤ん坊が帰って来て 市役所に結婚届と出生届を病院の帰りに出してきたと言い 私は赤ん坊の名前に、一抹の不安を覚えた チェリーの時も、その名前を聞いたとき どうせバカに育つぞ!そう思ったものだが・・・ 『シェリー』だそうだ! 決めた時に拓からすぐに…

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美佐子は挨拶をすますと 「お母様の部屋はこちらです すみません、お母様は家具にはとてもうるさいと お聞きしたんですけど とりあえず、ベッドだけしか入れられなくて」 昨日連絡して、ベッドまで用意してくれたのならば 本当に有能な女だ 「ああ、気にしな…

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驚いたことに息子の後ろから美しい女が出てきた 私は近所の若い嫁と逃げた夫を思い出した 無口で真面目な毎日は送るが 女に関してはまったくこらえ性がなく 気に入った女がいれば、いつの間にか連絡をしている あの夫の子供なのだ こんなことも考えておくべ…

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拓の裏切りが許せなくて とうとう、ここを見つけたのか? それにしても、部屋は用意しておかなくては 1週間もすればチェリーは退院する チェリーも赤ん坊もすこぶる健康のようだった さて、どうしたものか? すぐにどこか部屋を借りる余裕がないわけではない…

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さすがに私は疲れて部屋に戻った 驚いたことに部屋は荒らされていた 私は現金は持たないし、ここには置いていなかったので その当てつけのように 自慢の家具はボロボロに壊され、カーテンやテーブルクロスは 破かれて、特にチェリーの部屋の赤ん坊のために …

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拓は一か月もすると、もう、追われてはいないんじゃないか 、ここは絶対に知られていない そう思い始めて、近くのコンビニでバイトを始めた 赤ん坊とは不思議なものだ チェリーのお腹が大きくなるごとに 結婚しないにしても、それが自分の子供だと思うと 何…

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「ショウは?」 チェリーがショウの荷物が無くなっているのに気が付く チェリーはショウの賢いまっすぐなところに やっと、最近気が付いた 拓の化けの皮をはいだ姿に幻滅している このままショウと結婚して生まれてくる子供を 一緒に育てたいと思っていたの…

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私は田舎にいた時には 子供の教育費なんか塾代でも出せば十分だと思っていた 息子はその塾代すら出していない 普通に学校に通っていて、真面目にしていれば 息子くらいにはなるものだと思っていた 大学は奨学金で行ってくれたし、大手の商社に就職したから …

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ショウは困ったように 「だって、ばあちゃんとは会ってまだ数か月なのに そんなに、俺のこと信じて大丈夫? それに、俺はその気持ちに答えられるとも言えないし 今まで、ばあちゃんみたいな人にもたくさんあったよ こんなにお金を託してく入れる人は初めてだ…

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そうと決まれば、ショウがここにいる必要はなくなる 「そう言えば、今までどこに住んでいたんだい?」 「知り合いになる人のところに、次々に転がり込んでいたんだ だって、まとまったお金もなければ 保証人になってくれる人もいないしね だから、調理師免許…

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ショウはもちろん、私の気持ちに気が付いていた 「拓とチェリーは結婚させたらいいんじゃない? そしたら、あっちの部屋に二人を置いとけば いいし、生まれてくる子供のためにも それが一番だよ あの二人はこれから心配だけど 祖母ちゃんがいてくれるんなら…

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拓とチェリーだ ここで一緒に暮らすとなると困ったことは一つ 二人ともここに来る前にはチェリーと寝ていたということだ この歳になると性の健全性なんかバカバカしいことは よくわかっている テレビでは俳優の不倫を鬼の首でも取ったように、大喜びして、そ…