誘惑の花

今、京子がいる環境では、絶対に聞かない話だ 美奈子の顔が浮かんだ 美奈子に知らせれば何か、この孫のために動くだろうか? いや、彼女は絶対に動かないだろう 彼女は俊哉と結婚した所から悔やんでいるのかもしれない 俊哉は田舎では本当の底辺で生きていた…

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「あ、よかったら、ご馳走するから あそこで一緒に食べない?」 りさ子はこの知らないおばさんに警戒することもなく 「あ、助かる~ 旦那がお金入れなくなっちゃって、何か仕事探さなきゃ って思ってたところ」 京子はそれは大変だと思いながら ファミレスに…

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自分のほうをじろじろ見ている京子に気が付くと にらみつけるように、通り抜けようとした 京子は慌てて 「あ、田舎の、…村の人間なの お母さんに元気かどうか見るよう 頼まれて、来たんだけど・・」 田舎の村の名前は、絶対だった そこの出身なんか、こっち…

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その住所を手に入れると、京子はすぐに 東京に引き返した 美奈子のような人は、良く知っている 京子の東京の友人にも数人いる 人生をマニュアル通りに生きている人 一番大事なのは自分で、間違いのない人生 困ることのない人生を送ることが正義だと思ってい…

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俊哉が出て行った娘とコンタクトをとっていた あの俊哉が父親らしいことをしていた それだけでも涙が出そうになった 美奈子はいい人だったし、あの俊哉を更生させる力のある 真っすぐで正直で、 でも世の中の深い所には目を向けない人 それはある意、だめな…

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もう一度、田舎の友人を訪ねて その、娘がどうなったのか聞いてみた 田舎は誰もが何でも知っているのだ 「ああ、りさ子ちゃんね 美奈子さんは出て行った娘にホッとしたみたいだったけど 俊哉さんのほうが、コンタクトを取っていたみたいよ りさ子ちゃんも田…

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俊哉に会ってみたいと思っていた気持ちが まさか、死んでいたなんて!と言う気持ちになり そして、その娘に会ってみたい気がした 「さぞ、美しいお嬢さんだったんでしょうね」 美奈子は思い出すのも嫌そうに 「まぁ、旦那に似ていましたからね でも、男の子…

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京子が丁寧に手を合わせると 「ありがとうございます うちのは若いころ、相当悪かったし 二番目の娘にあんなことがあったあと 何やかや色々あって 人にまた嫌われ始めてね~ 二番目の娘は私たちの子供にしたら よくできた子だったから うちの人も大喜びで期…

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京子は彼のお墓に行ってみた その日が命日であることも知らなかった ちょうどそこには、田舎のおばさんがいて 墓の掃除をしていた 親戚の人かしらと思いながら 買ってきた花と水をお墓の側に置くと その人は振り向いた 「あ!」 それは俊哉の妻である美奈子…

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京子は俊哉に恋をしたことはあるけれど 俊哉を愛したことはなかった だから、彼が何を考え、どんなものを欲しがり そして、どうやって生きてきたのかなんか ただ、懐かしむために知りたいだけで 本気で考える気はなかった その話の中の俊哉は、京子の全く知…

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「え!」 「そう、それで、俊哉が怒っちゃって 学校に怒鳴り込むし、いじめてた子を付け回して 謝れって殴ったり 先生たちの家にも行って、脅したりしたらしいわ 数週間、そんなことが続いたんだけどね ほら、あの、星の見える丘 最後はあそこの気にぶら下が…

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「でもさ、所詮、最後から何番目ってレベルで合格したんだよね ほら、私らの学年でも びりに近い子は、不純異性交際とかバイト禁止なのに バイトしたりで辞めた子多かったよね それとか、一生懸命勉強しても 点の取れないことかいたじゃん あれと同じでさ、…

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「え?何かあったの?」 「え~、あ、まぁ、全国ニュースになるほどじゃないか でも、この変じゃ知らない人はいないよ」 京子には想像もできなかった 「え?何があったの?」 「私たちが出た高校、あそこの下の娘はあそこに通ってたの 俊哉なんか中卒で、奥…

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彼女は小太りのおばさんとなり 気軽に冗談を飛ばしたり、夫への不満を 面白、おかしく話したりして、高校のころとは ほとんど同じような明るい笑顔だった でも、京子は彼女と話していても 少しも楽しくなかった それは、この数十年の間、職場では戦いの連続 …

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俊哉はいったいどうしているんだろう? 田舎のいいお父さんになっているのだろうか? ずっと、この田舎を出ることなく 国道沿いにできたホームセンターでパートをしている 友人と食事の約束をした 「京子!ご主人亡くなったんですって? 大変だわね~ でも、…

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むなしさに取り付かれたように 仕事を辞めた、そんなときに夫が倒れた 脳卒中で夫はあっという間に亡くなってしまった それからは、何をするでもなく日々を過ごしていたが 自分の中で気になっていることは やはり、解消しておこう 夫の死を目の前にして、こ…

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職場では男女機会均等であっても 力が同じならば、子供を持っている主婦は不利 同じくらいの子供の成績なら お金を持っていなければ不利 そんな悔しい思いをたくさんして子育てを終えた 夫は子供たちの立派な成長に満足しているし それなりの地位にも昇りつ…

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長い戦いのむなしさ それこそ真剣に頑張って、子供の幸福を願ってきたのに 結局、東京育ちのお嬢様たちのママ友には勝てなかった これから、その友人たちの目標は いかに素晴らしい結婚を刺せるかなのだ もう、そんなことはどうでもいい 子供の結婚を親が決…

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京子も必死だった 東京で仕事をするには能力があればよかった でも子育てはそう言うわけにはいかない とにかく、子供の頭の良さとお金が必要だった 夫は小学校から私立出身 それでも、夫を裕福に育てた親は他界しており 財産は夫の兄弟三人で分けたが マンシ…

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俊哉はすっかり田舎のいいお父さんになった 結婚前を知っている田舎の人間は、みな驚いた 『美奈ちゃんがしっかり者だからな』 そう噂していた 俊哉自身も、もともと不良とかになっている気はなかった 何かあれば、人は嚇せと!と教えられ どんな手を使って…

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それに、お互いの体に飽きたのかもしれない 田舎では全く違うエリア、全く違う階層 京子の友人たちが人間とは思っていないほど 毛嫌いしている俊哉なのに こんなに離れがたいのはセックスの相性がいいからかもしれない 京子の夫は誠実で優しいおことで、 俊…

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それから、二人の関係は京子の子供が生まれるまで 続くことになる 俊哉は三人の子どもができ 家庭内は幸せに満ちていた 美奈子は俊哉が田舎では破格なほど 稼いでくれることに満足して ある程度遊ぶのは仕方がないと思っていた 子供の世話で手いっぱいって言…

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俊哉は困った顔をした 「だって、奥さんいるでしょう」 美奈子のことはよく知っていたが 全く知らない顔をした 子供もいるのだ、ここに泊まっていいわけがない 俊哉はすっと、京子に近寄ると うつむいていた京子の顔を覗き込むようにしたかと思うと 軽いキス…

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「だって、東京には知り合いはいないし どこかで暇潰す、お金もないしな」 「仕事で来てるんだ」 「うん。お世話になってるおっさんが東京の知り合いに 頼まれて、それで来たんだ 給料いいし・・・」 そこで俊哉は言い渋った 多分、京子もいるしって言いたか…

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俊哉が悪いやつなのは、あの少ない時間では 全くわからなかった 彼はずっと優しかったし、一緒にしゃべっている間 別に意地悪そうなことだとか、暴力的なことだとかは 全く話さなかった でも、田舎の同級生たちから聞いた話は凄すぎて 強盗、強姦、そしてゆ…

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「ま、奥さんは、その頃、入院してたからよかったけど 奥さんの親二人とも、けっこううるさいからね」 「結婚したの?」 それは、わかっていたことだけど ショックだった 結婚している男に手は出せない 「入院って?子供?」 「うん。女の子が出来てさ!かわ…

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少し笑いながらマンションのエントランスに入ろうとすると 後ろから 「京子?何にやついてるの? 今の彼氏?楽しそうにやってるじゃん」 振り向くと俊哉だった 全く変わっていない俊哉 田舎で会っていた通り 作業着にペンキで汚れた運動靴 彼は京子に続いて…

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園田敏夫 何事もそつがなく、でも誠実で 一緒に働いていても、彼が自分に恋しているのはよくわかる 「京子!ちょうど、もらったチケットがあるから コンサートに一緒に行かない?」 多分、京子の趣味を調べて、 必死にチケットを取ってくれただろうに そんな…

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ゆすり、たかりもするような話も 何人かの知り合いからは聞いた そんな人間だろうか? 一緒に過ごした時間は、短く 付き合ったと言っても二か月もないくらい 京子は彼の中に、京子と通じるような 何かを感じていて、それが数か月たった今でも 心にわいてくる…

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「あんなクズたちが、自立して暮らしたりすると思う? あのあたりの人間はみんな実家暮らし その美奈子って子もそうでしょう?」 京子はそんな事情に詳しくはなかったが 確かに佐由美なんかも彼氏とはホテル代がもったいないと 彼の実家に泊まりに行ったりし…