おばさんであること

家に電話は絶対に無理だ 満里奈たちの若いころには携帯電話なんかなかった 祖父母が陣取っている部屋に家電は一つ 一回目のベルで老人は絶対出るのだ バス停で待っていて!それもその言葉通り待ってくれていたのは 4回目くらいだった 俊介にしてみれば満里奈…

おばさんであること

だれもが、そう、注意してくれた 高校を出たばかりの満里奈にはわからなかった 満里奈は中学受験で女子高に六年間通って その間も祖父に固く守られていた それでも、自分では家庭教師との秘め事なんかもあったから そんなにまじめなお嬢様ではないと思ってい…

おばさんであること

今はトラックの運転手をしていて 地元で家族四人で暮らしている 奥さんは三つ年上、子供は二人とも女の子で 高2と中3だそうだ 昔の俊介からは考えられない 満里奈の中学の同級生でも高校に行ってワルになった男子は いることはいる でも、高校に行ったとい…

おばさんであること

二人で美也を見た 三人の中では美也が一番人間として間違いないのは わかっているから いったいどんな恋愛をしてきたのか興味津々なのだ 「明美みたいに今のご主人が初めての人? もちろん、素晴らしい恋愛をして結婚したんでしょう?」 満里奈のその言葉に…

おばさんであること

「今、何かそういうことに縋れる 最後の年齢なんじゃないかと思うのよ そう感じて、振り返ると 色んな恋をしたけれど あの時ほど恋焦がれて、素敵な恋はなかったって気がして 彼が一体どうなってるか、無性に知りたくなったの」 明美は呆れたように 「え~今…

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すぐに明美が 「もしかして初体験の相手だったとか?」 もちろん、三人とも生理は上がっている 明美のその質問に満里奈は首を振った そのことのほうに二人は驚いた 「だって、硬いお爺さんとおばあさんに育てられたんでしょう?いつの間にそんな・・・・高校…

おばさんであること

「大学に入る前の3週間の出来事だったの もちろん、それっきり 俗にいうロクでもない不良ってやつなんだけどね 彼を探してるの」 二人とも本当に驚いた 育ちがよさそうで、アメリカでバリバリ仕事をする夫を持ち 趣味は文学的なことで 見た目も上から目線の…

おばさんであること

それは初めての恋だったこともあり 満里奈には誰の忠告も聞く耳はなかった 俊介が来れば心ときめき 俊介だけを見て、何か一言でもしゃべりたいと願い 満里奈とは同い年だが 中卒で、女慣れしている俊介には 満里奈の気持ちなんかその目線だけで 手に取るよう…

おばさんであること

俊作は塗装工で仕事が終わると仲間と この店によくコーヒーを飲みに来た 店では大人しいし、身長は180センチ 顔はその頃はやった醤油顔ってやつで とにかくかっこよかった 満里奈は一目で恋に落ちた 一緒に働いている、近くの公立に通った美奈が 親しく話し…

おばさんであること

祖父母はすっかり店のほうは信用したのだが その頃の藤沢あたりの、海辺は危ない男たちでいっぱいだった そんなことはもちろん知らないまま 満里奈もそのカフェでバイトすることになった 春休みの間だけだし、何か起こるなんて思ってもいなかった その初日、…

おばさんであること

大学に合格した春休み 祖父母に 「私、バイトしてみちゃダメかしら?」 祖父はすぐに 「バイトなんかしなくったって 小遣いならあるだろう? 何か買いたいものがあるのならば おばあさんに言いなさい 女って言うのは何かと物入りらしいからな」 祖父はもう、…

おばさんであること

祖父母は立派な人だったから気弱で経営者の才能がなく何をやっても長続きしない父やお嬢様育ちでオムツも満足に変えられなかった母よりもよほどしっかり育ててもらった小学校の頃から祖父母のしっかりした教育と干渉の中でそれを不服とも思わなかった満里奈…

おばさんであること

「そうね、不倫とかそう言うことかもしれないんだけど まだ、彼に会ってないのよ・・・」 二人は、また満里奈が文学かぶれのようなことを 言い出したと思った 満里奈が生まれたのは神奈川の海の近くでした 祖父がひと財産築いて、長く憧れていた藤沢の近くに…

おばさんであること

美也はやさしく満里奈を促した 「それで?」 美也は普段からできるだけ本音で生きていきたいと思っている その本音が美しいのだ 子供の成績を他の子供と比べるなんてもってのほかだと思っているし 自分が専業主婦として完璧に家族の縁の下の力になりたいと …

おばさんであること

「だって、ご主人はずっとアメリカなんでしょう? 子供もいないし、市民大学とか俳句とか言って 出歩いているけど 所詮は男だろうな~って思ってたの」 満里奈はむっとして 「何よ!所詮は男って!そういうんじゃないよ」 美也が明美をやんわりとたしなめる …

おばさんであること

満里奈はここで言おうか言うまいか迷っていた でも誰かにしゃべりたいのは確かなのだが さて、この二人はどう思うだろう でも、この二人ならば後腐れはない 「私さ~ちょちょっと、面白いことしてるんだ」 美也は満里奈のことだか高尚な趣味なのだろう 俳句…

おばさんであること

こんなストレスのたまらない会話が三人が会ったときの会話で しばらくは楽しかったが 実はつまらない 明美は徹が全く自慢の種にならなくなっても ママ友達に嘘をつき続けることが楽しかったのだ 子供の優劣なんか学校や塾やそんなくだらないところが決めてい…

おばさんであること

「それなのに明美ちゃんに反抗するって言うのは 明美ちゃんに興味があるのよ お父さんの本当に好きな人の話に 耳を傾けるって言うのは 親に興味があるってことじゃない 喜ばなきゃ」 そう言われて、明美は嬉しそうに 「そうなのかな? でも、素直じゃないし…

おばさんであること

「そうかしら? 明美ちゃんが徹君に聞こえるように 話したりしてるんじゃない?」 美也も普段ここまでは突っ込んで離さない でも、この三人ならばしゃべりたいことをしゃべる 「中学生のころって、親のことになんか興味なかったし うちの子も、今はアニメに…

おばさんであること

美也がなんだか言い渋っていると 明美が 「いいのよ、気を使ってくれなくても 美也さんのとこの大輔君は優しいんでしょう? やっぱり、違うのは旦那よ だって、美也さんの旦那って 幼稚舎からずっと、慶応でしょう? なんだか、お坊ちゃまで優しそうなんだも…

おばさんであること

三人が知り合ったのはそんな経緯だった 同じ専業主婦だが、ママ友とは全く違う関係に 三人とも新鮮な楽しみがあった 何度かランチしたりお茶をしたりして 気心も知れてくると お互いの関係の間に子供が介在していないから 遠慮なく話ができる 子供のママ友だ…

おばさんであること

「私はすごく楽しみにしてたんだから チケットさえ買ってくれればいいわ こんなに至れり尽くせりされたんじゃ 帰って気の毒すぎるわ」 明美がそう言う 満里奈は平身低頭でそれまで相手の本来の姿が見えなかった 落ち着いてよく見ると 年頃は自分と同じくらい…

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慌てて入って来た満里奈の手には 今買ったばかりのコーヒー そして、その席がちょうど二人の横で 見栄で履いているハイヒールが暗闇の中 絨毯に躓いてしまった 「あ・・・」 幸いなことに、アイスコーヒーだったが 二人の頭から思いっきりかかってしまった …

おばさんであること

美也はママ友にドタキャンされ、 それでも、もう、チケットは買ったから 仕方なしに席に着いた 最初から断ればよかった でも、美也はそうは思うが、実はそれはできない性格で だいたい他人に合わせて生きている 自分でも性分だから仕方ないとあきらめてもい…

おばさんであること

夫とは絶対に行かない邦画 そして、特に不倫物などには目もくれない それが満里奈のスタンスではあるが その映画の男優が気になっていて もちろん、そんなことはおくびにも出さないのだが 実は不倫にも大いに興味ある それで、誰にも内緒でその映画を見に行…

おばさんであること

明美は今の徹の手に負えない状態に頭を悩ませながら あの時、小学校受験をしていればよかった このままでは公立の中学に進むしかない状態だった 満里奈、明美、美也 全く接点のない三人ではあるが年齢はほとんど一緒 満里奈は夫はいるがその夫はアメリカに単…

おばさんであること

徹が小学校に上がる前に夫の海外勤務も終わって日本に帰ってきた小学校受験は考えたのだが大学まで全て公立だった夫は何も高いお金を払って小学校から私立にやらなくても中学受験を頑張らせればそこから私立でいいんじゃないかそう、言ってあっさり無しにな…

おばさんであること

息子の徹がまるで言うことを聞かない 夫はお前のせいだと言う そうなんだろう 専業主婦で息子を育てること以外には 何か忙しいようなことはない 徹は一人っ子だ 夫はもう一人、女の子が欲しいと言ったが 明美は子供は徹一人で十分だと思っていたから 子供は…

おばさんであること

美也は今は子供の中学受験がすべてだった 朝6時に子供を起こして、計算と漢字の練習をさせる 自分は5時には起きて ポテトサラダや唐揚げ、夫用のヘルシーなサラダに 焼き魚、そして三人の子供たちのお弁当 冷凍食品なんかもってのほかで 揚げ物も空いた時間…

おばさんであること

この世のすべてが家の中にあり 中心は家族のことだけ 濃い知り合いは子供のママ、いわゆるママ友 学生時代の友人もほとんどママになり ママ友というスタンスは変わらない そうじゃない、昔の友人は 社会での立場が違ってきていて、話をしていても面白くない …