発達障害の母

「そういうことだったのね 私、あの頃、ケロの家の母親が後妻だって知らなかった そうだよね、抜群の運動神経だったのに どうして、代表にならないのかも不思議だったわ」 「ハハハ、あ~ちゃんは俺のことなんか完全無視で 勉強してるか本読んでるかだっただ…

発達障害の母

「あの頃、おれ、ちっとも楽しくなかったんだ 俺んちって継母だっただろう? オヤジといちゃいちゃするか人の悪口ばっかり 俺、小学校の頃は世の中すべてに反抗してたからな あの頃、知ってはいたんだ 俺は継母で苦労してたけどお前だって苦労してたこと そ…

発達障害の母

店に行ってみると友くんとネコもいた すると、その横にいたキンキラのおっさんが 「わ~、おばさんになったなぁ~! 小学校の頃、俺が一番、嫌いだった女!」 すぐにケロとわかった その、昔と全く変わらない毒舌に ちょっと、ひるんだ 「ほら、全く変わって…

発達障害の母

それは優等生を気取っている私の胸をえぐる言葉だった 思ったことは必ず口にする そして、その思ったことっていうのが たいがい誰もが考えているけれど口にできないことだ もちろん、ケロは私にだけそんなことを言うのではない 誰にでも、そういう風にものを…

発達障害の母

そう言えば小学校の頃は皆に嫌われて 頭も悪くて、いつもたった一人で小汚い格好で 教室の隅にいた 休み時間にはみんなでドッジボールをやっているのを 横目で見ながら、鉄棒の棒の上を軽業師のように歩いていた 私も皆とドッジボールをするようなことはでき…

発達障害の母

行きたくはなかった 今でもあんなに心が傷ついたことは ほかに思い出せない この村にいたくないと、この同級生たちとは 早く別れたいと思わせたのはケロがいたからかもしれない 友くんはただただ、懐かしいだろう! そういう気持ちだと思う 私とケロのことな…

発達障害の母

努力や成長なんかが馬鹿らしく思える私に 友くんからメールが来た 「園部洋治が帰ってきてるから ちょっと、出てこないか?」 園部洋治? 私はしばらく思い出せなかった 「誰?」 「ケロだよ!」 ああ、思い出した いや、思い出したどころじゃない 私にとっ…

発達障害の母

でも、それは全く間違いだったようだ 千絵さんから生まれて、千絵さんに育てられた三ちゃんは 少しも千絵さんに似ていなかった 本当に正直で優しい子だった それを村の人は、ちょっと、足りないからだなんて言っていたが 本当にそうだろうか? 足りなくても…

発達障害の母

私は結婚して子供を持った時 こんな母を持ったし、こんな村の生まれでもあるから 子育てには、本当に心を砕き そして、たくさんの書物を読み、ネットを検索し そしてできるだけ多くの親子とかかわるようにした そうやって見ていると、やはり、環境は大事だと…

発達障害の母

母にも村の空気はわかっている しかし、よそから千絵さんの親戚が来て 立派な葬式を出したってことは 村ではちょっとしたセンセーショナルな出来事で 母はその空気に酔っていた 前の私ならば三ちゃんを殺したかもしれない母親の葬儀で その女と生前仲が良か…

発達障害の母

「夫も早く死んだしって、 殺したんだよ!」 「ちょっと、あんた、言っていいことと 悪いことがあるだろう」 私はおかしくて笑いそうになる 皆、千絵さんが殺したと確信している ただ、そんな恐ろしい人と付き合いがあったなんて わかったら、大変だから 口…

発達障害の母

葬式が終わって帰り道 三々五々、バラバラと歩いていると 話す声はいろいろ聞こえてくる 「まぁ、遠い親戚って、しっかりした人だったね 立派なお葬式だったこと」 「お墓は三ちゃんと旦那のところに入るんだろう? どっちも嫌がるだろうね」 「でも、別にお…

発達障害の母

母はなんだかうれしそうに葬式に行く準備をしている 「行かなくてもいいんじゃないの?」 「何言ってるの?皆行くわよ! それが、この村の決まりだからね あんたも早く着替えなさい」 私は行きたくはなかったし 行く義理も何もないのだけれど ちょっと、村の…

発達障害の母

三ちゃんの母親である千絵さんは それから間もなく亡くなった なんでもベランダから飛び降りたらしい それは自殺とかではなく、ベランダの柵を 風呂と間違えたって話だ 認知症の人間をベランダなどに出すのだろうか? ふっとそんなことを思ったが 千絵さんが…

発達障害の母

「そうね、わかるわ」 そう、口では言いながらも 私は『だから、40年前から何にも変わっていない 三ちゃんは死に損だし、犯罪を起こさないようにって! 違うじゃない!犯罪を隠して、みんなでなぁなぁにしてるから 今でも似たようなことばっかりだし 志ある…

発達障害の母

途端に二人が遠い人のように見えた ここでは、よっぽどわかりやすい犯罪以外は だれも、そこを深く調べようとはしない その私の空気に気が付いたのか ネコが少し低い声で 「あ~ちゃん、わかるよ あ~ちゃんは16の時にこの村を出て行って正しいものの方向に…

発達障害の母

「自分がどんなに頭がいいか そして、どんな風にお金を貯めたかを自慢したくて仕方がない人だった だから、爺さんを殺して、ついでに三ちゃんも殺して 火災保険も手に入れて、一石三鳥だったって自慢したかったんだけど さすがにそんなことは言えないって頭…

発達障害の母

「家まで送って行くと 三ちゃんはあの性分だから 俺たちに水でもくれようとして 寄って行けって腕を離さないんだ 水って言ったって砂糖が入った麦茶だったけど 三ちゃんはそれを水って言ってたな」 友くんが懐かしそうにしゃべる 「ああ、あれはあそこのおば…

発達障害の母

「もう、ボケているからって、本当のことを 言うとは限らないでしょう?」 私は二人がどんな風に考えているかわからないので 何となく言ってみる すると、二人とも驚いたように私を見て 友くんのほうが 「ああ、ネコ、あ~ちゃんは知らないはずだよ あ~ちゃ…

発達障害の母

三ちゃんのことは同級生たちはどう思っているんだろう? それが知りたくてコーヒーを飲みに行く いい具合にネコと友くんがいた 「おお、あ~ちゃん、久しぶり だいぶ、家のなかで暮らすのに慣れてきたんだな」 「母ちゃんに慣れてきたか~、ぶっとんでるもん…

発達障害の母

私たちの中に刷り込まれている親子関係 田舎だとやはり昔ながらの感じで 親のおかげで・・・・ そんなフレーズが当たり前のように使われる 「千絵さんもボケてはじめて本当のことが 言えるようになって楽になったんじゃない だって、あのまま育ててたって独…

発達障害の母

私は涙が出てきて、その場をすぐに失礼した 頭にくるくる回るのは、あの頃の三ちゃんだった いつも、教室の隅っこのほうから眩し気に見ていた私 あの頃の気持ちがよみがえって来た なんて、すごい子供なんだろう? 同い年なのに、なんて優しい子供なんだろう…

発達障害の母

ボケた三ちゃんの母親は 断片的にあの頃、爺さんには手を焼いた!夫が考えた! 火が回ってどうしようもないと思った! 三ちゃんの子育てに疲れていた! 自分が手でしっかり押さえていた三ちゃんに 『福が鎖につながれたままだ!このままだと焼け死ぬ!』 そ…

発達障害の母

あのお葬式 たぶん、誰もが悲しみ、誰もが彼のために泣いていたが 誰よりも尊敬していたのが私だとは 誰も知らなかった それも、鎖でつながれていた犬の福ちゃんを助けに戻って 焼け死んだと聞いたとき 私は涙が止まらなかった 「え?あれは寝たきりのじいち…

発達障害の母

私はどうしても小学生ながらも母と比べるからだ 同じような感じなのに、心が美しいだけで どうして、こんな何だろう? 母も実際、小学校四年生くらいの知能指数 本を読ませても、三ちゃんとほとんど変わらなかった でも、ちょっと厚化粧をしたお金好きの母は…

発達障害の母

三ちゃんは皆から大っぴらに馬鹿だと笑われていた だからと言って三ちゃんのことを、誰もが好きだった ネコですら馬鹿だと笑っていたが それで、バカにしているわけではなかった 三ちゃんは本当に心がきれいだったからだ 昔の私が通っていた小学校には特別学…

発達障害の母

私は母のことをなんとかかんとか悩みにしながらも 期待はしているのだ 16の時から母に対峙したことなど一度もない だから、発達障害であるにしても かなりの確率でまとも寄りであると思いたいし 今まで、すこし、私自身が悪く思いすぎていたんじゃないかと…

発達障害の母

母には物をあげることによって 友人だと思いたい人間がたくさんいるし その人たちがすべて母から物をせしめることを 目当てにうちに来ているとは思えないが 私が自分が子供の頃には買ってもらえなかったお雛様 母ももちろん買ってもらっていないからと 少し…

発達障害の母

母はたぶん、自分が普通ではないことに気が付いている しかし、それを容認する自分には耐えられないのだろうし みんなが母に対して、少し足りないと思いながら接するのを 物をあげることでカバーしようとしている 私が送って来たもの、弟の家が送って来たも…

発達障害の母

私はあの頃のことは忘れていない 自慢ではないが私は田舎の小学校の中では 群を抜いて絵や作文がうまかった それで、学校を代表して何かと表彰されたものだった 同級生は皆、その作品を見たり 普段の私の成績を知っているから納得してくれるのに その子たち…

発達障害の母

母がいなくなれば、私はここには帰ってこない ここに、何か私の興味をそそるものは何もない それならばできるだけ深く付き合うのはやめて そう、考えているのに 何かと村の人たちの好奇心の対象になっていて 遠慮なくやって来て私の近況を聞くおばさんたちは…

発達障害の母

本当は16の時にこの村を出て 母からも離れて、 世間の一般常識とかワイドショーの基準のようなものに どっぷりつかって生きてきたし 16の私には村の卑猥なところなんかまったく見えてなかったから かなりショックなのだけれど それはうまく隠した 隠した…

発達障害の母

少し笑顔がこわばりはしたが 私は笑って 「わかってるよ 私がこの村を出てから長いと言ったって この村に16までいたんだよ それが、そんなに深刻なことじゃないことくらい わかっているから、安心して」 「そう、よかった この村では不倫や浮気で済むなら …

発達障害の母

冷静に考えれば何も悪いことではない 警察に捕まるような話でもなければ 誰かが傷ついたとしても、舌打ちくらいで済む そんな純粋さはこの村には一つもない 奥さんが一範に抱かれても まぁ、仕方がない すぐに離婚だの不倫だの騒ぐのは 東京の進んだ人たちだ…

発達障害の母

数日後、いつもの喫茶店でネコに会った 「ああ、なんか、恵子が感謝していたよ さっそく週に三日塾に通うことにした まぁ、恵子にしたらこの村では心配なことが多いし 樹奈がやりたいって言ってるし ありがとう」 「ああ、うん。 まぁ、樹奈ちゃんのためにや…

発達障害の母

村中の盛りのついたおばさんの相手 そんな噂から私は勝手にもっと、汚れた人間を想像していたが その真っすぐな瞳と、その奥の女ってものをよく知っているという まなざしが、あ、この子だ!そう気が付かせた 「かずのりくん?」 「うん。あそこのばあちゃん…

発達障害の母

千枚田の丘を歩きながら 思いつく限りの汚い言葉を口にした 「あの糞ババァ、ほんとに、死ねばいいのに なんで子供を産もうなんて考えたんだ! 能天気にあの顔をさらして生きていけるなんて 信じられない!」 そんなことをぶつぶつと言っていると 後ろから突…

発達障害の母

これが偏見なのもすべての発達障害、知的障害のある人に 当てはまるわけじゃない ただ、母は自分以外の、 いや、自分がそういう種類の人間であることに気が付いていないが 自分以外のそういう種類の人を嫌い馬鹿にする それなのにその、一範を相手にするって…

発達障害の母

もう、人にアドバイスなんかできる立場になんかない そんな思いに駆られて、そのあとの話は上の空だった 「あの、問題は学力なんですけど・・・・・」 「ああ、それは、やっぱり塾にやらないと ほら、ここから車で45分のあの市なら そういう塾もあるから、…

発達障害の母

帰って来て久しぶりに母に会い 発達障害なんてやつは本人の努力の他なのだから 仕方がない、母の人格とは別だ 何度そう、言い聞かせてきただろう 今度もまた、私はそれは母のせいではないと 心に言い聞かせながら 恥を飲み込んだ 「そう、えっと~、そういう…

発達障害の母

あ、父は何年前に亡くなったんだっけ?すぐにそう考えたああ、そう言えば母が今の私と同い年くらいの歳だそれから、ずっと一人この二人の話方や目つきそして母の私が子供の頃父以外の男の人や若い男に対する態度もしかしたらそうなのかもしれないその淫乱バ…

発達障害の母

「あ、それは.....」村のことなら私もこの村出身だ東京なら警察沙汰になるようなことも昔から知ってるからとかあの人はお金があるから村で何かあった場合はなんとかしてくれるなんて理由で事件にはならないこともあるそういうことを振り回すような正義感なん…

発達障害の母

「でも、中学頃からなんとなく女の子につきまとうようになってその頃は何をするわけでもなかったんですが気に入った女の子の家までついて言って帰るみたいな感じでしたその頃、うちの人がちょうど村長になって村の人たちがみんなで追い出そうとしていたのを…

発達障害の母

「この村から西の方にちょっと行ったところに小波さんって家があるんです」「ああ、もしかして昔、山崎のバァがいたところ?」私が小学校の頃村の誰かの親戚のおばあさんが住んでいた小学生には気持ち悪いおばあさんに見えて誰も、そう呼んで近寄らなかった…

発達障害の母

恵子ちゃんといつもの喫茶店に行くとマスターが嬉しそうに「あ、あ〜ちゃん、久しぶりだね」そうだ、最初の頃は少しの時間でも母に拘らない時間が欲しくてここにコーヒーを毎日のように飲みにきていたがそういえば知らないうちに毎日来ることは無くなってい…

発達障害の母

は母一緒に食べたがるから一緒に食べるが猫舌で食に全く興味がない母しかし、人間が食事に対してうんちくを行ったりするのはどうやらかっこいいらしいくらいの認識はあるから口ではテレビの食リポの言うようなことを言いたがるしかし、トンチンカンだし実際…

発達障害の母

そう言いながら時計を見るともう、昼食の時間だ「よかったら、あそこの喫茶店ででも一緒に食事しない?」「あ、はい。でも。お母様は?」私は母と食事をできるだけしたくないそのぶん、心を込めて母の好きなもの体にいいものを作るのだ数種類作って目にも鮮…

発達障害の母

母は普段から自分脳内に浮かんだことを気ままに話すからトンチンカンなことが多いのだ「ネコさんが村長になったおかげでいいことはたくさんあったけどあれを野放しにするくらいなら前の賄賂まみれの村長の方が良かった」説明はトンチンカンなのに人の悪口は…

発達障害の母

私はなんのことかわからずに母を見ると母は「一範のことなんだろう?あんな奴がいると、女の子はここらあたりの学校にやらせられないよね親がついて回るわけもいかないし」恵子ちゃんは私を見て「ええ、それもあるんだけど」「ごめんなさいその、一範って人…

発達障害の母

しかhし、恵子ちゃんは乗り気で「樹奈も連れて行きました制服が気に入ったみたいだしなんか、みんな洗練されていて私もこんな学校で勉強したかったそう思えるようないいとこでした」「ネコは?」「主人は女子校っていうのが気に入ったみたいでこれから、ここ…