小さな願い

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2人は保奈美が入院しているという
病院を訪ねた

個室に入っていくと
2人を見て
保奈美は笑い出した

「何?見舞金でも持ってきたの?
理子にどこを刺されたか聞きたいの?
理子はこんな姉がいたんじゃ
結婚なんかできない!って叫んでいたんだけど
犯罪者になった理子の方が
問題よね」

相変わらず嫌な感じで
みぃはうんざりする

でも、この様子を見て

「あら、理子ちゃんがあなたを刺したことで嫁にもらわないなんて考えたこともないわ」

そう思っていたはずなのに
つい、口からは正反対の言葉が
出てきた

発達障害の母

誰もが一緒に仕事をすれば

すぐに、ちょっと、頭が足りないことはわかる

この結婚を進めてきた親族は

がっかりを通り越して、うんざりしていた

今の世の中のように

パワハラだのモラハラだのを

あげつらう時代ではない

もはや、ハラスメントが日常の時代だ

祖母はここにいじめられにきたようなものだった

誰よりもがっかりしたのは祖父で

付き合っているときは

一緒に作業したりなんかしない

ただ、映画を見たり食事をしたりで

恋している目からは

ドジなとこもただただ、可愛かったのだ

小さな願い

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家族っていうのは困ったものだ
理子だって姉さえいなければ
幸せな本当に、中流家庭のお嬢さんですんだだろうに

自分の家も、あの母さえいなかったら
貧しいながらも楽しい家だった気がする

しかし、あの母がいたからこそ
康太は弁護士となり、みぃは資産家
そして、自分は沢村との幸せな生活を手に入れられたのだろう

何かを「いい」とか「わるい」とかでは
一概に言えない
その結果は遠い先にあるかもしれないからだ

ミキは今こそ、理子に会いたかった
すると、みぃは

「私ねあの姉、保奈美に会ってみたいの
いったい何があって、今の彼女はどんな気持ちなのか
ショウは日本には当分帰って来ないけれど
まだ、理子ちゃんのことは忘れてないだろうし
どうしてそうなったのか詳しく聞けば
理子ちゃんのこと迎え入れてもいいと思ってるの」

ミキもすぐに頷いた

発達障害の母

祖母の実家の父親が、その頃でいう所の

『やり手』であるらしいと言うのを聞いて

だれもが、祖母に期待をした

でも、喜んだのは義母だけであった

だいたい、美形ぞろいの祖父の家系では

まず、祖母の容姿が親族の不興を買い

そして、親族が近くに住んでいると何かと集まったり

一緒に仕事をするのだ

祖父は公務員とはいえ、父親は馬や牛の売買

長男は大きなシイタケ農園、

家で食べる分のコメも野菜も作っている

次男が結婚するときには父親が牛を一頭プレゼントする

そんな家だった

祖母はまず、仕事ができない

農家の仕事は今まで手伝ってきてはいたが

ここほど大規模にやってはいなかったし

牛の世話なんか恐ろしくて論外だった

小さな願い

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ミキはあの普通のお嬢さんであるしか能がなさそうにしか
見えなかった理子を思った
彼女の今までの人生の中の姉の存在

彼女の様子からは
姉がいるにしても
お互い服を交換したり、彼氏の話をしあったり
そんな仲の良い姉がいるようにしか見えなかった
そう見せていた彼女の苦しみは
こちらからは計り知れないほどの感情の押さえだったのだろう

今回、姉を刺すほどの思い
それはミキにはわからなかった

母ならば殺してしまいたいほどの思いにかられたが
ありがたいことに
母はいつも男を追いかけていて
ミキの目の前にいる時間はほとんどなかった

兄妹はそんな母の元、仲が良かった
康太とは自分の人生であるようにかかわったし
みぃは正二に託すことが
ミキの精いっぱいの気持ちだった

そして、今もお互いを思いやり
不遇だった時代を笑い話にできる

発達障害の母

人の口の煩いばかりの村

ちょっと隣の隣くらいならば

嫁さんに困っていた時代だから十分噂は流れまわっている

どこそこの娘は賢くて別嬪らしい

あそこの娘は戦時中は腹んでいたが、その子は死産だったらしい

あの家はどうやらお金に困っているらしい

そんな中で祖母の話はこの村までには伝わってこなかった

ここからかなり離れた村の村長の娘

長女は近くの大きな農家に嫁ぎ

次女は養女にもらわれた先が、親せきとはいえ学校の教員の家

村長は外に子供を持っているほどの甲斐性があるらしい

調べた誰かが知ったこともその程度で

本人のその娘は洋裁学校を出ているから

縫物ができるらしい

そんな話を聞いた本家の兄は

義理の妹と弟が結婚するよりもよっぽどいいと

祖母との結婚を後押しして、あっという間に祖母は嫁に来たのだ

祖母としては大金星だ!

小さな願い

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母親は言うことを聞かず
理子にちょっかいを出す姉を嫌い
父親は厄介者としか思わない
そうなると、理子は自分を責めた
できるだけ姉に優しくと
遠く離れて暮らしている間も
手紙を出したり、プレゼントを贈ったり
できるだけ寄り添えるよう頑張った

中学受験をしてほしいと言う父に
姉を思って、公立に行った
大学でさえ、姉よりも偏差値の低い所を選んだ
理子の今までは常に姉よりも上にならないこと
それだけだったのだ

ショウと知り合ったとき
その危惧が少し、心に浮かんではいたのだが
ショウの気持ちはわかっていたから
姉でもどうしようもならないだろうし
ここは譲れないと思ったのだ

「理子ちゃん、ショウ君のこと本当に好きだったのよ」

ミキがそう言うと
みぃも

「うん。保奈美がショウに迷惑かけることが
許せなかったみたいだしね
全部話してくれれば、そんなこと気にしなかったし
保奈美にお金くらいあげたのに」