街の灯り
発達障害の母
雅ちゃんの妹の立派さや
夫が外で作った子供を文句も言わずに引き取った
母親の心の広さもすごいが
その妹より嫌われていた雅ちゃんもかわいそうな人だ
最後は神社で首をくくったというのも
わかる気がした
皆、雅ちゃんの旦那とみっちゃんの後家さんの赤ちゃん
雅ちゃんの妹の出奔なんかに夢中で
彼女のことはすっかり忘れている
「そうだったんだ、それで、ネコは見つけられたの?」
「いや、ネコもかなり時間を割いて探しているらしいけど
ぜんぜん、わかんないって」
「でも、見つけないほうがその妹にとってはいいんじゃない?
その妹がいなくっても、雅ちゃんちはやっていけるんでしょう?」
友くんはちょっと、困ったように
「そりゃぁ、今はね
でも、あそこの親も90近くになってくるから
だれか一緒にいないと、きついんじゃないかな」
口調がいつもの友くんではない
その歯切れの悪い感じ、ちょっと、気になった
街の灯り
発達障害の母
「俺たちもびっくりしたさ
あそこの父親がよそで作った子供だって
突然連れてきたんだよ
ほら、あそこの父親ってよく、県庁のある街に
遊びにいってただろ
あのあたりの飲み屋の女に
生ませたらしい
あの妹が中学生の時に、その母親ががんで死んだって」
この村にはまともな普通の家庭なんて一軒もないのだ
皆、何かを抱えている
そして、案外、そういうことを受け入れているのだ
「雅ちゃんのお母さん、偉かったんだね
雅ちゃんと妹が差別されているなんて
聞いたこともなかったから」
「そりゃあ、俺らみんな、うんざりするほど
雅ちゃんには悩まされていただろう
あんなに性格の悪いわが子よりかわいかったんじゃない
結局、結婚もせずに雅ちゃんが出て行ったあと
家で、何かと親の面倒を見たのは妹のほうだったしな」