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発達障害の母

誰も変わってないんじゃなかろうか

私もそうかもしれない

小さな子供の頃から

母親が好きだと思ったことが一度もない

それは家族みんなだった気がする


母親以外は人間として言ってはいけない

そんな言葉は知っていたから

母に対して不満を浴びせはしなかった

父はお酒に逃げ

弟は友人と遊ぶことに逃げ

私は本に逃げた

母の喋りに付き合っていると

聞いているほうが気持ち悪くなるのだ


発達障害の母

化粧をしている母を見て

イライラしたが黙って化粧直しを

してあげる

すると、嬉しそうだが


あ〜ちゃんの仕方だと

顔がぼんやりしちゃうようだけど」


そんなことを言うので

これから出かけるわけでもないから

一番派手な母のお気に入りの

シャネルの真っ赤を塗ってあげた


少しフランス映画に出て来る

老婦人のようになって

私は心が落ち着いた

雅ちゃんは小学校の頃のまま

頭が悪く不衛生で

その頃女子の間で流行っていた

香り消しゴムをこっそりくすねるような

子供だった

でも、次の日、それは自分のだと

すぐに使い始めたりするような

バカなところもあって

今もそのままなのに驚いた

発達障害の母

おぞましさに背筋が凍った

そんな人間に、さっき笑われたのだ

いや、でも、そんなおぞましい話題から

なんとなく、その星田医院の後家さんにも

いい印象は持てなかった


家に帰ると母親が

私が買ってあげた化粧品の話をして

嬉しそうにしている


母は昔から化粧は大好きで

家族で出かける時には

鏡の前に1時間は座っていて

出かける時間も構わず

自分の顔を撫で回していた


その頃は母親とはそういうものだと

何も考えていなかったが

化粧をしても美しくはならない母を不思議な

気持ちで見ていた


自分が化粧をするようになると

母は小学校三年生がこっそり

鏡台の前でやるような化粧だった


東京の巣鴨あたりに行くと

年をとって、若い頃の化粧が似合わなくなり

濃い化粧で見苦しいおばあちゃんも

けっこういるが

母の場合は50年も前からそんな化粧だった


発達障害の母

「いじめ殺したって?」


私が驚いて尋ねると


「まぁ、たぶん本当のことだと思いますがね

あそこの爺さんが倒れて半身不随になった時に病院に入れるのはお金がかかるからって、息子と母親が二人で面倒見るからって家にいたんですが

その姑さんも意地悪な人で、看病を雅ちゃんにさせれば、必ずいじめ殺すだろうってふんでたようで、看病は子供ができない嫁がするのが当たり前だってさせたんだけど、案の定、雅ちゃんもあの性格だから、まともには見ないし親戚の話ではその爺さんあざだらけだったって話ですよ

それもベッドの端に紐をくくりつけて自殺してたからね〜その時間雅ちゃんはずっと、家に一緒にいたはずなんだから止めることはできたんじゃないかって.....

お姑さんにしてみれば邪魔な夫をバカな嫁がいじめて自殺に追い込んでくれたって

なんか、凄まじい話ですよ」


発達障害の母

雅ちゃんが帰って行くと


「助かりましたよ〜

あの人、最近は愚痴を言っては

酔いつぶれて、合間に僕に

相槌をもとめるから

知らなくていい話まで知って来ますからね

田舎に、こう言う店を出すときに

そういう田舎の揉め事には

絶対にタッチしたくないって思っていたのに

彼女が毎晩のようにここで酔い潰れるから

すっかり、あそこのマスターと

怪しいなんて言われていますよ」


私が笑いながら


「大変だと思うわ

あの人も苦労したのね」


そんなことをしんみり話すと


「はははは!

大丈夫ですよ

あんなこと言ってましたが

あそこのお舅さんは

彼女がいじめ殺したって評判ですよ」

発達障害の母

帰って来ると

延々と苦労話が始まった


「とにかくいじめられてなぁ

子供ができないってだけで

こんなにいじめられなきゃならないなんて

苦労したんだよ〜

今まで我慢したのに

50幾つになって真剣に

離婚してくれなんて言われるとは

思ってもいなかったわ

そういえば、あ〜ちゃん

星田医院の先生、光男となかよかったよね

あの人死んじゃってさ

医者の不養生ってよく言ったものだよね

でもさぁ、あの、奥さんがくせもんでね

絶対、うちの旦那と一緒になりたかったから

毒でも盛ったんだと思うよ」


あまりの話に絶句していると

雅ちゃんの妹が呼びにきた


「お姉ちゃん。離婚でお金もらうまでは

あそこの家にいなきゃ

もう、いい加減に帰りなよ」


そう言って連れて帰った

発達障害の母

「星田医院だよ」


小学校の頃、私がどんなに頑張っても

彼には勉強では勝てなかった

星田光男だ

田舎には珍しく茶色の髪で

色が白く、背も高かった

中学までは一緒で、

中学では女の子には人気で

バレンタインの時にはチョコレートを

山ほどもらっていた


本人はそういう男女のことはまったく

興味がなく

勉強ではまともに問題を解きあうことができるのが私だけだから

2人で、よく数学の難問を解きあって

私は女子たちに羨ましがられたものだった


性格も良かったし、さっぱりした子だったが

もう、死んだのだ


ちょうど、雅ちゃんがトイレから

帰ってきた


「なんか、泣いてばっかりいたんだけど

久しぶりに同級生に話すと

すっきりするわ〜」