「そんなことは
うちに生まれた以上問題にする
必要はないんだよ
君が自分に一番、合っている仕事を
選択するときに
高校に行くことが不必要なら
行く必要もないから」

沢村の言葉に速水は

「じゃ、行きたくない
休み時間に男子に誘われて
ついて行く自分はものすごく嫌いなの
女子には当然嫌われているし
男子にはちやほやされるけど
結局、体目当てだし」

「じゃ、行かなくていいわ
明日ママがすべての手続きを
すませてくるから」

速水は驚きの展開に
ありがたいとは思ったが

「私は明日から何をすればいいの?」

発達障害の母

うなずく私に


「ちょっと、トイレ!」


そう言って雅ちゃんは立って行った


雅ちゃん、あんな風に言ってたけど

浮気したり、遊びのうちは結婚してたほうが

やりたい放題できるからさ

あそこの旦那たち悪いんだよ

独身の素人のお姉ちゃんばっかり引っ掛けて

相手を本気にさせると

結婚してるからって逃げるのさ

けど、今回は金持ちの医者の

後家さんを捕まえたらしくって

離婚して億という金をもらおうって魂胆さ

お姑さんもそれに賛成で

子供ができなかったんだから

慰謝料も出さないっていわれたらしいよ」


そんな、話、サスペンスドラマだけの

話だと思っていたら

本当にあるんだとびっくりした


「ね、その医者の後家さんって

星田医院の話?」

「何の問題もないのよ
真面目に高校に通うとか
勉強でいい成績をとるとか
1人の男に律儀に操を立てる
そんなことは、
本当はどうでもいいことなのよ
そんなことを大事にする家庭が
多いかもしれないけれど
うちは全然違うから安心して」

沢村が後を引き継いだ

「うん、そんな自分を淫らだなんて
思う必要なんて一つもない
君には別の才能があるんだよ
みぃさんのように」

ミキも頷いた

「そうね、あなたが嫌なら
高校なんてやめちゃえばいいわ
みぃのところに行きましょう?」

「そうだよ、所詮、
真面目に勉強しろって言うのは
将来、そうしないといい仕事につけないからだしね」

発達障害の母

私は穴があったら

入りたいくらい真っ赤になる

小学校中学、そして、

高校は算数ができなくても

入れるような高校に行った雅ちゃん

今の今まで心から軽蔑していたのだが

一瞬にして私の方が

ドット、底辺まで落とされた気がした


「ああ、ごめんなさい」


「いいけどな、別に

うちらんとこには子供ができんかったんや

それで、ばあちゃんにはいじめられるし

旦那は浮気するし」


「若いうちに離婚すればよかったのに」


マスターが気の毒そうに言う


「でもね、うちの旦那は

他の女にも上手いことしか言わないけど

うちにもそうなんや

『子供なんか、いらん

お前さえいればいい』

そう言われると

どんな女が乗り込んで来ても

どんなに外で遊ぼうと

許しちゃうんだよ

それに、旦那から今まで

離婚を切り出されたことはなかった

っていうことはどんな女より

うちが一番大事ってことやろ?」


うんうんと頷きながらはなしをきく

速水はミキの言葉に
自分のことは吹っ飛んだ
沢村が2人をソファに座らせると

「それでも、僕は母さんが好きでしょうがなくって、母さんと一緒になれるのなら
母さんのそんな過去なんか
どうでもいいって思ったよ」

速水は言葉が出ない
ミキはさっきの速水の表情から
速水の苦悩にも直ぐにたどり着いた

「最初に会った時から
父さんと離れたくなかったんだけど
今までの自分のこと
家族のこと、性風俗にどっぷりと浸かった自分
とても、一緒になれるなんて
考えてもみなかったのよ」

「でも、2人はこうして一緒になって
幸せに暮らしてるんだよ
常識なんて少しも考えなくてもいいんだ」

速水は堰を切ったように泣き出した

「好きじゃないの
誰も好きじゃないのに
男の子に触られると抵抗できないの」

発達障害の母

それを聞いた時の私の顔に

何か表情がさっとよぎったのだろう

小学校をの頃の彼女は

ただ、不衛生で小汚いだけの子供

だった気がするし

中学の時は早くからませていて

髪をカールして来たり

口紅をつけたり

似合いもしないのに男の目だけを機にする

小汚く痩せた女で

私から見たらただただ、不衛生極まりない

女の子だった記憶が蘇った


「そういえば、あんたんところの

おばちゃんが一昨日

美味しい赤飯が出来たからって

うちにパックでくれて

うちのばあちゃんが喜んでたわ〜

髪の毛はいっていたけどな!」




発達障害の母

あ〜ちゃんとは中学までだったよね

うちはなんとか、商業高校には入れたけど

勉強はできないし、ども、そこで隣町の

今の旦那と知り合って

大恋愛をして結婚したのよ

子供さえできてれば何の問題もなかったと思うよ

旦那の家は農家だし

今時でも子供のできない嫁なんて

いらないに等しいよ

旦那のこと本当に好きでね」


すると、マスターが


「ここの旦那、今も結構いけてるからな」


すると、雅ちゃんは嬉しそうに


「そう、高校の時は学校一の

モテ男でかっこよかったから

告白された時は天にも登る気持ちだったよ

あの頃は私も結構可愛かったしね」